Voice 会員の声

会員校インタビュー Interview

社会や保護者のニーズを知っておくことは、自校の教育の質を高めるために必要

六甲学院中学校・高等学校 校長 橋 純雄 先生

関西の男子御三家の一角として、進学実績に定評があり、同時にキリスト教イエズス会の教えに基づく「他者のために、他者と共に生きる人間」を育んでいる六甲学院中学校・高等学校(兵庫県神戸市)。
今回は、「今の六甲にはこうした場が必要だ」と、私学マネジメント協会の研修を強く勧めていただき、ご自身も熱心に講座にご参加いただいている、校長の橋純雄先生に、当協会への入会の経緯や、今後期待していることなどを伺いました。

私学マネジメント協会入会の経緯

ー ご入会いただいてから、橋先生ご自身も熱心に講座にご参加いただいていますが、元々は、当協会の講座内容には、あまり肯定的でなかったと伺いました。

実はそうでした。本校はキリスト教教育を土台として教育している学校ですので、講座内容紹介などで表現される「(他者や競合校に)勝つ」ために「戦略(ストラテジー)を練る」、「差別化をはかる」というような用語の使い方やものの見方には違和感がありました。周囲の学校の取り組みや教育動向などは気にせずとも、「本校独自の人間教育」をやっていれば、自ずと共感してくれる保護者や受験生が集まり、伝統のある自校の教育をこれまで通りすればよいと考えていました。「マーケット(市場)」として受験生・保護者を見ることも、一人ひとり「人間」として大切に教育すべき相手を「人材」として見る見方と通じているように思えて、抵抗感があり確かに肯定的な印象は持てませんでした。


ー 実際に講座に参加してみていただいて、考え方が変わったということでしょうか?

そうですね。実際に参加してみると、文部科学省が掲げていることの社会的な背景や、目指している教育の方向性をある程度知ることができ、社会の大きな変容に応じて教育を改革しようと努力している他校の事例を聞くと、社会や保護者のニーズを知っておくことは、自校の教育の質を高めるために必要なことなのだなと思い始めました。

また、現在社会で求められている教育と、イエズス会教育が大事にしてきたことは根源的に共通している部分が多くあることにも気づきました。また、逆に六甲学院ならではの特異性、突き抜けている部分も明確になりました。「グローバル教育」も「リーダーシップ教育」も六甲学院では伝統的なイエズス会教育として当たり前のようにやってきたことですが、改めて現代の状況に合わせて言語化し、意図して伝えていかなければ、本校の人間教育の独自性は伝わらないのだなということを考えさせていただきました。最近は、広報にもきちんと力を入れて伝え方を考えていこうと話をしています。

私学マネジメント協会のサービスを利用して感じること

ー 私学マネジメント協会の講座の一番のメリットはなんですか?

講座を通して、改めて自校の「経験→振り返り→新たな実践」を基本にした探究型の教育活動(国際交流・社会奉仕活動・被災地訪問・OB職場訪問・フィールドワーク等)を、「学問的な視点で見るとどうなるだろう?」「現代的な表現で表すとどうなるだろう?」と様々な角度から深堀できるいい機会を提供していただいていると思っています。

私学マネジメント協会への期待

ー 私学マネジメント協会へ今後期待されていることはありますか?

今年6月のイエズス会系の学校に勤める教育者が集う世界会議で、これからの若者の教育の方向性としてキーワードにあがっているのが「レジリエンス(しなやかな強靭さ)」を育てることでした。本校でもコロナ禍を経てきた最近の生徒たちの「自己肯定感の低さ」「ポキッと折れてしまいそうな脆弱さ」は話題に上ります。ただ、こうした生徒の「心を支える教育」というのは、文部科学省でもGIGAをけん引した経済産業省でも殆どなく、議論のエアスポットとなっているように思います。次期指導要領のキーワードとして「ウェルビーイング」という言葉も上がっていますが、あまり議論が深まっているようにも見えません。私学はこうした放置された議論を後から追いかけるのではなく、現実の生徒への対応を含めて先回りして準備をしていく必要があると思います。私学同士が集まっている場を活かし、国や公立学校では十分に議論できていない分野でも、知識や教育実践の共有を促進していただきたいですね。